奥蔵おくぐら)” の例文
旧字:奧藏
其の中に春見屋はるみやという宿屋を出しましたのが春見丈助という者で、表構おもてがまえ宏高こうこうといたして、奥蔵おくぐらがあって、奉公人も大勢使い、実にたいした暮しをして居ります。
十七の奥蔵おくぐらに、五枚錣に九ツのじょうおろして、大切に秘蔵をしておりますのをね、今日お見えの嬉しさに、実は、貴女に上げましょうと思って取出しておきました。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
問屋町の裏側はしもたやで、というよりほとんへい奥蔵おくぐらのつづき、ところどころ各家の非常口の、小さい出入口がある。女たちがそっと外出そとでをする時とか、内密ないしょの人の訪れるところとなっている。
旧聞日本橋:02 町の構成 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
金貸かねかしをする、質屋をする、富豪ものもちと云われるように成って、霊岸島川口町れいがんじまかわぐちちょうへ転居して、はや四ヶ年の間に前の河岸かしにずうっと貸蔵かしぐらを七つも建て、奥蔵おくぐら三戸前みとまえあって、角見世かどみせで六間間口の土蔵造どぞうづくり