太杖ふとづえ)” の例文
香染こうぞめ法衣ころもをばさばさと音さして、紫の袈裟けさを畳んだままで、ひじに掛けた、その両手に、太杖ふとづえこごみづきに、突張つっぱって、れて烏の鳴く樹の枝下へ立つと、寺男が、背後うしろから番傘をさしかけた。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そのていは……薄汚れた青竹の太杖ふとづえを突いて、破目やぶれめの目立つ、蒼黒い道服をちゃくに及んで、せい高うのさばって、天上から瞰下みおろしながら、ひしゃげた腹から野良声を振絞って、道教うる仙人のように見えた。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)