外方そと)” の例文
外方そとを見ながら、「誰か人が来たようだな。道具を買おうと言うのだろうが、あわよくば持逃げするのさ。私は行って見て来るからね」
故郷 (新字新仮名) / 魯迅(著)
かえって遠くに売りあるく鍋焼饂飩うどんの呼び声の、かすかに外方そとよりうちに浸みこみ来たるほどなりけり。
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
人夫達は荷造りの手を止めると、思い/\に腰を下して、外方そとを向きながら煙草を吸い出した。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
むかし、ひどい怪我をしたのらしく、右の後脚がうんと外方そとへねじれてしまい、ほかの三本の肢より二寸ばかりみじかい。肢をピョンといちど外へだしてから、探るような恰好でひずめを地面におろす。
キャラコさん:10 馬と老人 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
そして身体をちょっと振って、外方そとを見た。
雪の夜 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
お浪ははや寝し猪の助が枕の方につい坐つて、呼吸さへせぬやう此もまた静まりかへり居る淋しさ。却つて遠くに売りあるく鍋焼饂飩の呼び声の、幽に外方そとよりの中に浸みこみ来るほどなりけり。
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)