声色屋こわいろや)” の例文
文芸部員、振付師などが先生と呼ばれるのはまだいいとして、艶歌師えんかしあがり、声色屋こわいろやあがりの漫才芸人などが小屋では幹部級というところから先生と呼ばれている。
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
声色屋こわいろやがおひねりを貰うのをうらやんでみたり、新内語りが座敷へ呼び上げられるのをそねんだり、たまにおいらんの通るのを見て口をあいたりしながら、笠鉾かさほこの間を泳いでいましたが
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
娑婆しゃばの夜景にのびのびとして、雪踏せったを軽く擦りながら町の軒並を歩きますに、茶屋の赤い灯、田楽でんがく屋のうちわの音、蛤鍋はまなべ鰻屋うなぎやの薄煙り、声色屋こわいろや拍子木ひょうしぎや影絵のドラなど、目に鼻に耳に
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三月になるとなかちょうは桜の花盛り。それから後は花菖蒲、秋になると菊の花だ。両側ともずっとお茶屋の二階。芸者が上っている。新内の流が通るね。声色屋こわいろやが来る。ボアン。ええお二階のお客さま。
使命をなかばにしてズタ斬りとなるか、無念の鬼となろうとしているのを、世間はよい絃歌げんかさわぎで、河岸を流す声色屋こわいろやの木のかしら、いろは茶屋の客でもあろうか、小憎いほどいいのど豊後節ぶんごぶし——。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)