墓碑ぼひ)” の例文
庭中ていちゆう池のほとりに智勇の良将宇佐美駿河守刃死じんし古墳こふんりしを、先年牧之老人施主せしゆとしてあらた墓碑ぼひたてたり。不朽ふきう善行ぜんぎやうといふべし。
未来の世まで反語を伝えて泡沫ほうまつの身をあざける人のなす事と思う。余は死ぬ時に辞世も作るまい。死んだあと墓碑ぼひも建ててもらうまい。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
流れる椰子やしの実のやうに、何処へでも遠く漂流して行く、昔の日本人の情熱を、ゆき子はひどく勇気のあるものに思ひ、まんぢゆうの墓碑ぼひにも、はな子之墓なぞとあるのに
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
四宮理学士は、背丈はあまり高くはないが、色の白いせいか大理石の墓碑ぼひのように、すっきりした青年理学士で、物静かな半面に多分の神経質がひそんでいるのが一と目で看守かんしゅせられた。
階段 (新字新仮名) / 海野十三(著)
一体私は東北の僻村へきそんの出で、祖先の名は、源九郎義経とも平清盛とも伝わらず、元禄時代からの墓碑ぼひも残っているが、全くの水呑み百姓である、祖先のお蔭で中農程度の土地は持っていたが
銭形平次打明け話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
墓碑ぼひとか御堂などの、印を遺して置くまいと考えまする
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
庭中ていちゆう池のほとりに智勇の良将宇佐美駿河守刃死じんし古墳こふんりしを、先年牧之老人施主せしゆとしてあらた墓碑ぼひたてたり。不朽ふきう善行ぜんぎやうといふべし。