堪忍袋かんにんぶくろ)” の例文
しるこの鍋をくつがえされて、かお小鬢こびんおびただしく火傷やけどをしながら苦しみ悶えている光景を見た時に、米友の堪忍袋かんにんぶくろが一時に張り切れました。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しかし、時々は胡桃の樹も堪忍袋かんにんぶくろの緒をきらし、その最後の葉を揺すぶり、我が家の黒い鳥を放し、そしてこう言い返す——
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
「いきましょう、堪忍袋かんにんぶくろが残業してたのよ」女は青年を押しやった、「みつかるとうるさいじゃないの、早くう」
超過勤務 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ごうをにやして蛾次郎は、さかいの板をドンドンとたたいた。すると、向こうにいて、ジッと我慢がまんをしているらしい竹童も、ついに、堪忍袋かんにんぶくろをきって
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今度もかけちがいましてお目にかからんけりゃ、わが輩は、だ、長駆渤海ぼっかい湾に乗り込んで、太沽タークの砲台に砲丸の一つもお見舞い申さんと、堪忍袋かんにんぶくろがたまらん
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
そうしたら何ぼ英国だって堪忍袋かんにんぶくろの緒を切るに違いないだろうということになったんですが、生憎あいにく、その爆薬だけが足りないので、こうして汽車で先まわりをして御無理をお願いに伺ったんです
女坑主 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ばかにしている——三日目の夕方まで七兵衛が帰らないので、神尾の堪忍袋かんにんぶくろほころびかけました。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
もう堪忍袋かんにんぶくろが切れてよかりそうなものを、ここでも平身低頭のていび入るのだから、この武士の堪忍力の強さと言おうか、意気地なしの底無しと言おうか、それに兵馬はあきれながら
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しかしながら宇治山田の米友は、この時、堪忍袋かんにんぶくろが切れたように飛び上って
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
米友が決然として言いきったのは、この場合、正道がかえって、わからずやのように受取られるのみならず、拾得物を横領の悪漢のようにも受取れるものですから、堪忍袋かんにんぶくろの緒を切りました。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)