地位みぶん)” の例文
定七は困ったが、お鶴といっしょにいる地位みぶんのありそうな女に気がねして何も云わなかった。広巳はやっぱり何も云わなかった。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「そうですか、それは大変でございますね、ほんとにね、どんなことでもできるご地位みぶんでも、病気はしかたがございません」
黄灯 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「そんなにお嫌いになる方じゃありませんよ、立派な方ですよ、お逢いになれば、すぐ判ります、地位みぶんのある方ですよ」
警察署長 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
いきで、上品で、地位みぶんのある方よ、それで若旦那のことを思ってらっしゃる方って、ぜんたいなんだ)
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
いやよ、若旦那が、わたしに邪慳にしないようになったら、何時でも云ってあげるわ、ほんとよ、それもただの裏町のおかみさんや娘じゃないことよ、りっぱな地位みぶんのある方よ
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
じょちゅうが出て往くと省三は手紙の文字に眼をやった。それはその日公会堂に来て彼の講演を聞いた地位みぶんのあるらしい女からであった。彼はその手紙を持ったなりに女の地位みぶんを想像しはじめた。
水郷異聞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
羨まれる地位みぶんでござったが、前世の約束ごととでも云おうか、ふと、我家の召使に眼がつくようになったのじゃ、それは何でも非番の日で、拙者は終日じぶんの居間で、草双紙などを読んでいた。
人面瘡物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
伊右衛門は女房は子孫のためにめとるもので、めかけとして遊ぶものでないから、それほど吟味をするにも及ばないと思った。この痩浪人やせろうにんは一刻も早く三十俵二人扶持ぶち地位みぶんになりたかったのであった。
四谷怪談 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「わしは、神に仕える地位みぶんじゃ、決して嘘いつわりは云わん」
放生津物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)