嘲侮ちょうぶ)” の例文
古典の筆者はまた、義仲を、非同情というよりもやや揶揄やゆ的に書いている。都人が遠隔の野性人を見るときに持つ嘲侮ちょうぶを平家の筆者も持っていた。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
法水は、鎮子の辛辣しんらつ嘲侮ちょうぶにもたじろがず、かえって声を励ませて云った。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「ありませんかの」と嘲侮ちょうぶをふくめて「もし御用のときは、童僕わっぱの金若をお召しなされ。彼方の鈴縄すずなわを引けば、すぐ下の木戸から兵どもが登ってまいろう」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
法水は鎮子の嘲侮ちょうぶに、やや語気を荒らげて答えた。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
牛糞町うしぐそまち」などといって、振わない門族の果てを、住宅地の呼び名にまで嘲侮ちょうぶすることを忘れなかった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いや、かの女にとれば、生命いのちを賭けての、法への挑戦であり、南への嘲侮ちょうぶであり、男への復讐なのだ。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
依然、後ろ向きのまま、楊雄は薄ら黄ばンだ特有な皮膚に嘲侮ちょうぶの笑みをたたえて見せた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが具足に五体と胆心を固めた藤吉郎は、非難、反目、嘲侮ちょうぶ、一切に耳もないかの如く、城内武者溜むしゃだまりの床場ゆかば床几しょうぎを置き、夜もすがら出兵の人員、隊伍、荷駄、軍需などにわたって指図していた。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、やや嘲侮ちょうぶを唇にたたえていう。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)