嗅煙草かぎたばこ)” の例文
しかし老人は子供のようにちょいと首を振ったなり、古風な象牙ぞうげ嗅煙草かぎたばこ入れを出した。これもどこかの博物館に並んでいたのを見た通りである。
不思議な島 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
君は私の嗅煙草かぎたばこ入れを見たことがあるだろうね? で君は私が嗅煙草を取り出すのは一度も見たことがないだろう。
苦虫をかみつぶしたような顔つきで、嗅煙草かぎたばこでよごれた着物を着て、木箆きべら(5)を手にしながら学校の峻厳しゅんげんな法則を執行していた人なのであろうか? おお
やがて彼れ衣嚢かくしを探りいとふとやかなる嗅煙草かぎたばこの箱を取出とりいだし幾度か鼻に当て我を忘れて其香気をめずる如くに見せかくる、れど余はかねてより彼れに此癖あるを知れり
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
あたかも拇指おやゆびの先に一摘まみのフレデリック大王の嗅煙草かぎたばこでも持ってるようにおごそかに息を吸い込んで、それからパン屋にまっ正面から次の激語を浴びせかけた。
「ヤッ! これはこれは嗅煙草かぎたばこじャ!」とブラウンが云った。
僕は大臣にさよならを言って、金製の嗅煙草かぎたばこ入れをテーブルの上に置いたまま、すぐ帰ってきた。
芝居しばいの女優を喝采かっさいしてはおのれの趣味を示さんとし、兵営の将校と争論してはおのれの勇者なるをてらい、狩猟をし、煙草をふかし、欠伸あくびをし、酒を飲み、嗅煙草かぎたばこをかぎ、撞球たまつきをし
いままで四年間、レスパネエ夫人に少量の煙草および嗅煙草かぎたばこを売っていた。その付近で生れ、ずっとそこに住んでいる。夫人と娘とは、その死体の見出された家に六年以上住んでいた。