喪中もちゅう)” の例文
正月が来たけれど、喪中もちゅうだった。三日をヒッソリ暮して、四日の御用始めに出勤した小室君は俄に腹痛を催して、輾転反側てんてんはんそくした。
秀才養子鑑 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
やがて、大炊の門を訪れてみると、門は閉じてあって、喪中もちゅう忌札いみふだらしいものがってある。裏の土塀口を押入って、召使の者に
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
喪中もちゅうにいるようなしずけさの中に、雪の表面のこおりつく音がいく度となく聞こえた。
思うに御当家が喪中もちゅうにあるのをよいおりとして、藤堂家がわざと国境を押し出し、やがて勝手な所へ関のさくでも構えてしまおうという考えかもしれぬ。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「社長さんにも五枚ばかりと言いましたが、断りました。喪中もちゅうですから」
人生正会員 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
わたしたちが通って行く道は喪中もちゅうのようにしずんでさびしかった。あれきって陰気いんきな野原の上にただ北風のはげしいうなり声が聞こえた。雪片が小さなちょうちょうのように目の前にちらちらした。
「大殿貞氏さまのお位牌を陣中におくお心を拝察するにつけ、お子として、喪中もちゅういちばいの御精進ごしょうじんなのであろう、と」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「この城の喪中もちゅうをうかがい、嘆きの虚をついて、夜半来れる卑怯な敵は何奴なにやつか」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)