ふく)” の例文
が、あらましは、事情にくわしい守人もりとが、んでふくめるように聞かせてくれた。甚助が生れたその年のことだというから、天文十六年のことにちがいない。
剣の四君子:03 林崎甚助 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
〔評〕幕府勤王の士をとらふ。南洲及び伊地知正治いぢちまさはる海江田武治かいえだたけはる等尤も其の指目しもくする所となる。僧月照げつせう嘗て近衞公の密命みつめいふくみて水戸に至る、幕吏之をもとむること急なり。
笹村は乳房をふくんでいる赤子の顔を見ながら、時々想い出したように母親の決心を促した。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
土の下から発見されたのは若い女房の死骸であつた。女はむごたらしく斬殺きりころされてゐたが、その死骸のそばには生れたばかりの男のが泣いてゐた。その赤児の口には飴をふくませてあつた。
小夜の中山夜啼石 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
宮は知らずがほに一口の酒をふくみて、まゆひそめたるのみ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
と、人はばいふくみ、馬は口をろくし、深く蜀陣へ近づいた。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)