咄喊とっかん)” の例文
しかもこの戦争の影とも見るべき一片の周囲をめぐる者は万歳と云う歓呼の声である。この声がすなわち満洲のに起った咄喊とっかんの反響である。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その代り木唄——さっきは木唄と云った。しかしこの時、彼らの揚げた声は、木唄と云わんよりはむしろ浪花節なにわぶし咄喊とっかんするような稀代きたいな調子であった。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
実に今回のバッタ事件及び咄喊とっかん事件は吾々われわれ心ある職員をして、ひそかにわが校将来の前途ぜんと危惧きぐの念をいだかしむるに足る珍事ちんじでありまして、吾々職員たるものはこの際ふるって自ら省りみて
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
咄喊とっかんはこのよくせきをせんじ詰めて、煮詰めて、缶詰かんづめにした声である。死ぬか生きるか娑婆しゃばか地獄かと云うきわどい針線はりがねの上に立ってぶるいをするとき自然と横膈膜おうかくまくの底からき上がる至誠の声である。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)