呼子笛よびこ)” の例文
木魂こだまをしてひびく呼子笛よびこにつれて、あなたの樹林やこなたの山蔭から、狐火のごとく殺到するのは、番士や黒鍬くろくわの者の手に振る明りです。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
合図の呼子笛よびこの声、たいまつの光り、それが一度にみだれ合って、すべての組々も皆ここに駈け集まった。神原茂左衛門は第五の組であったが、場所が近かったために早く駈けつけた。
馬妖記 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
風に捲き落された煙が下甲板一パイにみなぎっていたが、その中で二等運転手が、突然に鋭い呼子笛よびこを吹くと、待ち構えていたらしい人影がそこここから、煙を押し分けるようにして出て来た。
幽霊と推進機 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
探ってみるであろう。万一、なんぞ非常な場合が生じた時には、呼子笛よびこを吹いて合図をすること。よいか、くれぐれ先の者に気取られるなよ
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
遂にそれから間もなく彼方かなた納屋なやの前で、釘勘がけたたましく吹いた呼子笛よびこの音にも、手を分けて駈け向うことができなかったのであります。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しばらくすると、篠のそよぎの消えて行ったやぶの奥で、一声、二声、まろび音に吹かれた呼子笛よびこが尾をひいてひびきます。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
濡れねずみになって、河の中に立った東儀与力は、無念そうにおかを見上げて、息いっぱい、呼子笛よびこを吹いた。——身ぶるいをしながら、急をおかに告げた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、いわせもてず、ひとりが長槍ちょうそうをくりだしてくるのをかわして、咲耶子は手ばやく呼子笛よびこを吹きかけた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、けんめいにふいた呼子笛よびこは、とおきとりでにいる味方みかたをまねくまえに、あたりの悪魔あくまを集めてしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、おもてを星にふりあげていると、足もとから不意に、断続した呼子笛よびこが水のように鳴った。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、叫んでは呼子笛よびこを吹き、もがいてはまた、河の中で、笛のこわれるほど吹き鳴らした。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
呼子笛よびこのつんざき!
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)