吹寄ふきよ)” の例文
禁制品を一つ見付けるごとに、頬の肉を引き曲げるような苦笑いが、橋の袖に吹寄ふきよせられた町人共を、吹き溜りの紙っ切れのように顫えさせたのです。
礫心中 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
只管ひたすら人懐ひとなつかしさに、進んで、喜んで朝から出掛ける……一頃ひところ皆無かいむだつた旅客りょかくが急に立籠たてこんだ時分はもとより、今夜なども落溜おちたまつたやうに方々から吹寄ふきよせる客が十人の上もあらう。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)