吟誦ぎんしょう)” の例文
「はははは。そうらしいな。寒さを克服なさるため、足拍子あしびょうしにあわせて、書物のうちのお好きな辞句じくでも、吟誦ぎんしょうしていらっしゃるのであろう」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かれは、「ひびきりんりん」という故郷を去るの歌をつねに好んで吟誦ぎんしょうした。その調子には言うに言われぬ悲哀がこもった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
あの敏感な市川が我と我身の青春にえないかのように、「されど去歳こぞの雪やいづこに」と吟誦ぎんしょうして聞かせた時の声はまだ岸本の耳の底にあった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
一、ぞうの句は四季の聯想なきを以て、その意味浅薄にして吟誦ぎんしょうへざる者多し。ただ勇壮高大なる者に至りては必ずしも四季の変化を待たず。故に間々ままこの種の雑の句を見る。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
鄭玄は自分の文を詩のように吟誦ぎんしょうしてから封をした。玄徳は押しいただいて門を辞した。驢をめぐらして城に帰ると、すぐ部下の孫乾そんけんを河北へ使いに立てた。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)