合羽がっぱ)” の例文
草双紙の挿絵さしえを例にとって言えば、『金花七変化』の鍋島猫騒動なべしまねこそうどうの小森半之丞に、トンビ合羽がっぱを着せたり、靴をはかせたりしている。
明治十年前後 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
男は小柄な躯つきで、それが女のようにしなしなしてい、気取ったこびのある身ぶりで、おそのの塵除ちりよ合羽がっぱを脱がしてやっていた。
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
多勢とともに追跡してみたが、なにしろあの人出、一度は旅合羽がっぱへ手をかけたもののスルリと抜けられて、ついそこの通りでとうとう与吉の影を見失ったという。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
丁度其の日の申刻なゝつさがり、日はもう西へ傾いた頃、此の茶見世へ来て休んでいる武士さむらいは、廻し合羽がっぱを着て、柄袋の掛った大小を差し、半股引の少しれたのを穿いて
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と言って、半蔵は寿平次と一緒に、その荒いしままわ合羽がっぱを着た牛行司の後ろ姿を見送った。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
読物はこの頃になっては、ずっと新しくなっていて、丁髷ちょんまげの人物にも洋傘やはやり合羽がっぱを着せなければ、人々がかえり見ないというふうだった。
明治十年前後 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
合羽がっぱと笠と新しい草鞋が揃えてあった、お滝という女の心配して呉れたものらしい、然し当人は姿をみせなかった。
金五十両 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)