叱声しっせい)” の例文
右門はその死体を見ると、片手の切りとられているという一事から、すぐとそれが弟子でしの五雲であることを察しましたので、がぜん鋭い叱声しっせいがあげられました。
その時ひっそりした場内に、三度さんど将軍の声が響いた。が、今度は叱声しっせいの代りに、深い感激の嘆声だった。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ただひょうだけは仙人達に慣れなかったので、豹と見ると叱声しっせいをたてた。と、豹は恐れて逃げ去った。
仙術修業 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
けれども「南ドイツ人」の一団が現われて、恋に落ちた若い娘の気恥ずかしい告白を、堂々と歌いだした時には、もう堪えられなかった。彼は放笑ふきだした。憤りの叱声しっせいが起こった。
ぼくにしてみれば、話の最中ふりかえって此方こちらをみる、クルウの先輩達せんぱいたちもいるし、それでなくとも、氏の一言一句が、ただ、ぼくに向っての叱声しっせいに聞え、かあッと、あがってしまうのでした。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
右門のその叱声しっせいを耳にすると、不意にぎらりとわきざしを抜き放ちながら、とらば一突きにとばかり近より迫った相手は、なわめの恥をうけている敬四郎ののど輪です。
「余興掛も気がかなすぎる。男女の相撲さえ禁じている将軍が、を黙って見ている筈がない。」——そんな事を考えながら、叱声しっせいの起った席を見ると、将軍はまだ不機嫌そうに
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)