叫喊きょうかん)” の例文
その叫喊きょうかんは生まれいずる者の産声うぶごえであり、その恐怖は新しき太陽に対する眩惑げんわくであり、その血潮は新たに生まれいでた赤児の産湯うぶゆであった。
レ・ミゼラブル:01 序 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
ここかしこに射立てられて叫喊きょうかんする味方の騒乱を感じるのみで、少しも統一がとれなかった。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また彼は聞く、墳墓の底の瀕死のあえぎのごとくに、幻の戦いの漠たる叫喊きょうかんの響きを。あの物影は擲弾兵てきだんへい、あの微光は胸甲騎兵、あの骸骨がいこつはナポレオン、あの骸骨はウェリントン。
王の御座船「長蛇ちょうだ」のまわりには敵の小船がいなごのごとく群がって、投げやりや矢が飛びちがい、青い刃がひらめいた。たてに鳴るはがねの音は叫喊きょうかんの声に和して、傷ついた人は底知れぬ海に落ちて行った。
春寒 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そして山をも揺がす武者の叫喊きょうかんが、それに代っていた。累々るいるい、あなたやこなたに、はや数えきれぬあけかばね点綴てんてつされた。或いはひとつに或いは重なり合っている姿は悲痛を極める。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)