古伊万里こいまり)” の例文
色絵において、あの古伊万里こいまり古九谷こくたににより、日本もよき歴史を誇ることができる。だがすべての泉は支那に発し、支那を越ゆることは到底できぬ。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
しばらくは首と首を合せて何かささやき合えるようであったが、このたびは女の方へは向わず、古伊万里こいまりの菓子皿をはじまで同行して、ここで右と左へ分れる。
一夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
古伊万里こいまりの茶碗にゑがかれたる甲比丹かぴたん、(蘭人を顧みつつ)どうしたね? 顔の色も大へん悪いやうだが——
長崎小品 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
瑠璃るり色の古伊万里こいまりつぼ椿つばきの花のけてあるのが、夫の枕の向うに見える。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
久米一は元より柿右衛門の神経質なさくを嫌い、古伊万里こいまりの老成ぶったのはなおとらなかった。で、この増長天王にあらん限りの華麗と熱と、若々しさとほこりと、自分の精血せいけつそそごうとする意気をもった。
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたしはもう今日けふ限り、あなたとも御つきあひは御免ごめんかうむりませう。古伊万里こいまり甲比丹かぴたん小柄こづか伴天連ばてれん亀山焼かめやまやき南蛮女なんばんをんな、——いえ、いえ、それどころではありません。
長崎小品 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)