古今こきん)” の例文
「近衛前嗣卿から贈られた古今こきんです。みずから和歌をもうなどとは思わぬが、兵馬倥偬へいばこうそうのあいだにも、歌心は有りたく思う」
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それはかうさ……」細川侯は、そのむかし御先祖の幽斎老が古今こきん伝授を講釈した折のやうに勿体ぶつて、声に一寸調子をつけながらいつた。
しかるに万葉から古今こきんを経るに従って、この精神には外来の宗教哲学の消極的保守的な色彩がだんだん濃厚に浸潤して来た。すなわち普通の意味でのびを帯びて来たのである。
俳諧の本質的概論 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
僕は『古今こきん和歌集』のなかにある菊に寄せたる一首を読んで、さすがに菊は長命のシンボルなりと少なからず趣味を感じ、なお老いてもよく菊のごとく老の花を咲かせ、老のを放ち
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
ほんはなにを読みますか。古今こきんのなかでは誰を好みます、万葉のうちではどの歌を愛誦されますか。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
美濃みのの養老と伊吹いぶきの山のくびれには、万葉や古今こきんに、古くからわび歌われた幾つかの古駅があり、関ヶ原から湖南へ往来する旅人たちは、この峡谷の街道をあゆむごとに
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それらの辻や溝のほとりのものであろう、所々は、柳、桜に染められて、にや、万葉の詞藻しそうを継いで、古今こきんの調べを詠み競う人たちの屋根は、ここにこそあるべきはず——と
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ほんの、古今こきんのまねみにすぎませんが」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)