古事ふるごと)” の例文
寧子ねねよ。そなただけぞや。このような打ちあけた古事ふるごとを語るのは。——生涯、あれに添うてくださる妻と思えばじゃ。あの子を、……いえのう。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それにしても、あの主思いな二人の忠節といい、それを出してやられる太夫のお心のうち、昔の鬼王、童三どうざ古事ふるごとも想いだされて、拙者は思わず貰い泣きをしました」
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
首級くびを洗っている、妖怪じみた姉を見て、まず胆を潰し、ついで、納谷家の古事ふるごとや、当代の主人の不幸の話や、そのようなことばかりを云って、こちらの身の上のことなど
鸚鵡蔵代首伝説 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
げにや我が身のきままに、古事ふるごとの思ひ出でられて候ぞや。もろこしに蘇武といひし人、胡国とやらんに捨て置かれしに、故郷にとどめ置きし妻や子、夜寒の寝覚を思ひやり、高楼に上つて砧をつ。
謡曲と画題 (新字新仮名) / 上村松園(著)
白河の上皇さまに御寵愛ごちょうあいをうけたことは、かくれもないにせよ、八坂やさかの僧を忍びとしていたなどと、もう二十年もむかしの古事ふるごとを、いったい、たれがいい出したのでしょう。
しがない白浪しらなみの下ッにしろ、剣といえば日本のほこりと合点し、伊勢の玉纏横太刀たまきのたちや天王寺の七星剣などの古事ふるごとはとにかくとして、天国あまくに出現以来の正宗まさむね義弘よしひろ国次くにつぐ吉平よしひら
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)