口籠くちご)” の例文
少年はこう言って急に口籠くちごもりながらじっと私の顔を見た。その黒いは熱誠にまばたき、その白い頬は見る見る真紅まっかに染まって来た。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
星田はさっきよりも一層蒼褪あおざめて、空虚うつろな目をオドオドさせて、口籠くちごもった。
白糸は始めに口籠くちごもりたりしが、直ちに心を定めたる気色けしきにて
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
傍に居た大勢の人々も驚いて皆一時いちどきに娘の顔を見つめました。皆から顔を見られて、娘は恥かしそうに口籠くちごもりましたが、とうとう思い切って
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
と云いさして私は口籠くちごもった。形容の出来ない昂奮に全身が青褪あおざめたように感じつつかろうじて唇を動かした。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
私が差出した手紙と聖書をちらりと見たが、別に受取ろうともしないまま、心持ち口籠くちごもって云った。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
入っていないとすれば物理化学や、薬物なぞいう高等な研究に対して組織立った知識は持っていない筈だ……と見当を付けたからである。少年は果して赤面した。そうして云いにくそうに口籠くちごもった。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)