叡知えいち)” の例文
そして新時代の空気にふさわしい趣味と叡知えいちを持って、典雅な線を感じさせるコルトーは、まことに面白い対照というべきである。
死んだ無機的団塊が統整的建設的叡知えいちの生命を吹き込まれて見る間に有機的な機構系統として発育して行くのは実におもしろい見物みものである。
空想日録 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
尊厳な叡知えいちと、一見遍在していて全知全能であるように思われることとにたいして、自分の常にいだいていた深い畏怖いふの情は
叡知えいち、主体性、創造性、感情、習慣、性格、欲望など複雑な要素を含んで成立するものであって、従って文化法則というものは、正確な法則というより
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
と云うのも、そういった叡知えいちの表徴をなすものが欠けているからであって、博士の写真において見るとおりの、あの端正な額の威厳がないからであった。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
冥々めいめいのうちに作家チェーホフを支え導いていた端倪たんげいすべからざる芸術的叡知えいちの存在を明かすとともに、この叡智の発動形式の一端に私達を触れさせてれることである。
チェーホフの短篇に就いて (新字新仮名) / 神西清(著)
そしてくだらない質問だと叱られて席へ歸つたが、その時また私の側を通り、私を見て微笑ほゝゑんだ。おゝその微笑! 私は今も忘れない。それは眞の勇氣と叡知えいちの溢れたものだ。
探偵小説を書いたばかりに、祖国の叡知えいちに絶望を知るとは、残念、意外であった。
不連続殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
お品は始めてその叡知えいちの鋒鋩を見せました。そのお品の言葉が本當なら、曲者は房吉をおとしいれる積りでやつた細工でせう。
主体性と創造性と理想性と叡知えいちを持ち、環境にはぐくまれながら自ら環境を作り、歴史を伝承しつつしかも自ら歴史を創造するものであることからくる、当然の結果なのである。
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
しかし人間は生れながら、主体性、理想性、叡知えいち、良心、責任感を持っている。それは唯物史ゆうぶつし観などでいうように、外部の経済環境と歴史の必然で宿命的に決定されているというようなものではない。
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)