取附とッつき)” の例文
ここばかりではのうて、峠を越しました向うの坂、石動いするぎから取附とッつきのぼり口にも、ぴたりと封じ目の墨があるでござります。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
時に返事をしなかった、上框あがりがまちの障子は一枚左の方へ開けてある。取附とッつきが三畳、次のあかりいていた、弥吉は土間の処へ突立つったって、委細構わず
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
取附とッつきの三段の古棚のうしろのね、物置みたいな暗い中から、——藻屑もくずいたかと思う、汚い服装なりの、小さなばあさんがね、よぼよぼと出て来たんです。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まだ両親ふたおやともあったんです。母親が大病で、暑さの取附とッつきにはもう医者が見放したので、どうかしてそれをなおしたい一心で、薬を探しに来たんですな。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と門内へ駈け込んで、取附とッつきの格子戸をがらがらと開けて、車夫は横ざまに身を開いて、浅黄裏をかがめて待つ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
人足繁き夕暮の河岸を、影のように、すたすたと抜けて、それからなぞえに橋になる、向って取附とッつきたもとの、一石餅とある浅黄染の暖簾のれんくぐって、土間の縁台の薄暗い処で、折敷装おしきもりの赤飯を一盆だけ。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)