即効紙そっこうし)” の例文
顳顬こめかみ即効紙そっこうしをはって、夜更よふけまで賃仕事にいそしむ母親のごとを聞くと、いかなる犠牲もえなければならぬといつも思う。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
お国はその時、少し風邪かぜの心地で、蟀谷こめかみのところに即効紙そっこうしなどって、取りみだした風をしていた。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
学生はおもてを背けた。が、年増に限らぬ……言合せたように皆頭痛膏を、こめかみへ。その時、ぽかんと起きた、茶店の女のどろんとした顔にも、ひとしく即効紙そっこうしがはってある。
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼が茶の間から出て行くと、米噛こめかみに即効紙そっこうしを貼ったお絹は、両袖に胸をいたまま、忍び足にこちらへはいって来た。そうして洋一の立った跡へ、薄ら寒そうにちゃんと坐った。
お律と子等と (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)