ひつ)” の例文
これあに景略(王猛の字)のひつならんや、処士虚声を盗む何代なんのよか人なからんと王阮亭は言った(『池北偶談』巻二)。
「全く君子だ。古聖賢に恥じない徳人だ、」とそれまで沼南に対して抱いた誤解を一掃して、世間尋常政治家には容易にひつを求めがたい沼南の人格を深く感嘆した。
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
まずひつを古今に求むれば、長坂橋頭蛇矛だぼうよこたえたる張飛の一喝に近かるべし。
北京日記抄 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
天王寺大懺悔てんのうじだいざんげ』一冊を残した外には何の足跡をも残さないで、韜晦とうかいしてついに天涯の一覊客として興津おきつ逆旅げきりょ易簀えきさくしたが、容易にひつを求められない一代の高士であった。
美妙斎美妙 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)