匹田ひった)” の例文
きゅッきゅッと、帯や、下じめを解いて、着物をぬいで、丸めて投げると、下には、目のさめるような匹田ひったぞめの長じゅばん——そのまま
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
必死にもがく萩乃、匹田ひったの帯あげがほどけかかって、島田のほつれが夜風になびき、しどけない美しさ。乱れた裾前に、処女むすめの素足は、夜目にもクッキリと——。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
その朝も芸者のちょいちょいらしい、黒繻子くろじゅすえりの着いた、伝法でんぽう棒縞ぼうじま身幅みはばの狭い着物に、黒繻子と水色匹田ひった昼夜帯ちゅうやおびをしめて、どてらを引っかけていたばかりでなく
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
藍、浅葱、朱鷺色ときいろと、鹿子かのこと、しぼりと、紫の匹田ひったと、ありたけの扱帯しごき、腰紐を一つなぎに、夜の虹が化けたように、おんなの下から腰にまつわり、裾にからんで。……下に膝をついた私の肩に流れました。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その都度秘蔵娘のお桂さんの結綿ゆいわた島田に、緋鹿子ひがのこ匹田ひったしぼりきれ、色の白い細面ほそおもて、目にはりのある、眉の優しい、純下町風俗のを、山が育てた白百合の精のように、袖に包んでいたのは言うまでもない。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)