前額まえびたい)” の例文
今年五十二三歳であるが、重明とはにてもつかない、でっぷり肥った赤ら顔の、前額まえびたいが少し禿げ上って、見るから好色そうな男だった。
その豊富な角苅かくがりの銀髪とブラシのように生やしたゴリラ式の狭い前額まえびたいと太い房々とした長生眉ながいきまゆと、大きく一文字に閉じた唇を見ると
S岬西洋婦人絞殺事件 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「そいつを聞かれると、大いに憂欝ゆううつになるのですがねエ」と大江山課長は禿かかった前額まえびたいをツルリと撫であげた。
キド効果 (新字新仮名) / 海野十三(著)
源助のそう言うのを聞いて、二番番頭の伊之助は、前額まえびたい禿げたところを押えてヒョイとお辞儀をしました。
O氏は日露戦役の志士沖禎介氏のお父さんで、肥前は有田の弁護士である。もう六十を越えて、それで前額まえびたいは禿げているが、矍鑠かくしゃくとしたシャンとした老人である。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
柿の実のようないいつやをもった頬、苅りこんだ短い髭、すこし禿げあがった前額まえびたい、やさしいながらきりりとしまった目鼻だち——と書いてくれば、原大佐がどんなに立派な海軍軍人だか
太平洋魔城 (新字新仮名) / 海野十三(著)