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むかふ
「あら
貫一さん。これぢや切なくて歩けやしない。ああ、
前面から人が来てよ」
付け置かるゝとぞ同じ虫でも
蠶の如く人に益し國を
富すあれば
此く樹を枯して損を與たふるものあり
實に世はさま/″\なりと獨り歎じて
前面を見れば徃來は道惡き爲めに避けてか車の行くを
涼しい水の
調に耳を洗ひながら、猶三十分程も進んで行くと、
前面が思ひも
懸けず
俄かに開けて、小山の丘陵のごとく起伏して居る間に、
黄稲の実れる田、蕎麦の花の白き畑、
欝蒼と茂れる鎮守の森