初雁はつかり)” の例文
私にはその方が似合ふさわしいからといわれますので、おりおりは出詠しました。最初の題は故郷薄ふるさとすすき初雁はつかりというのでした。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
初雁はつかり、虫の音、花壇の手入れ、歌をよむ方やお百姓などは、さぞ忙しいでございましょう」
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「ははあ、初雁はつかりもとまるや恋の軽井沢、とはこれだ、この情味には蜀山しょくさんも参ったげな」
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ゆるき扱帶しごきむや、とほやまちかみづ待人まちびときたれ、初雁はつかりわたるなり。
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
だが、兵部と右京は、その知行地の中で、本藩とは別個に制札せいさつを立てたり、夫伝馬ぶてんま、宿送りも他領のようにし、また幕府へ献上する初雁はつかり初鮭はつざけなども本藩の済まないうちに、先に献上したりした。
ものゝふのよろひの袖を片しきし枕にちかき初雁はつかりの声
川中島合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
初雁はつかりは恋しき人のつらなれや旅の空飛ぶ声の悲しき
源氏物語:12 須磨 (新字新仮名) / 紫式部(著)