出納すいとう)” の例文
金銀の出納すいとうは毎区の年寄にてこれを司り、その総括をなす者は総年寄そうとしよりにて、一切官員のかかわるところにあらず。
京都学校の記 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
租稲そとうはもとより正税しょうぜい出挙すいこ出納すいとうまでが、ことごとく何束何把をもって計算せられたのは、えいすなわち稲の穂の運搬と貯蔵とが、普通であった証拠である。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
お絹の目算ははずれ、肝腎かんじんの金銭の出納すいとう、収支の自由は忠作が一手に握ってしまって、一分一朱も帳面が固く、お絹がかえって虚器をようするようになってしまったから
出納すいとう会計から五百両ちかい金が、織部の印判によって引出されていることをつきとめた。
ちくしょう谷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
けれどもどういう具合に出納すいとうが出来て居るか、またどういう方面から税が納まって来るか、どこへ支出されるということは明らかな事でもありかつ納税方法も分って居りますから
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
自分の扶持米ふちまいで立ててゆく暮らしは、おりおり足らぬことがあるにしても、たいてい出納すいとうが合っている。手いっぱいの生活である。しかるにそこに満足を覚えたことはほとんどない。
高瀬舟 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
そのくせ横浜気質かたぎというか、依然、金の出納すいとうなどは、荒っぽかったようでもある。ある時など、急遽、水道税を納める為、母から百円紙幣一枚を渡され、局へ駈けつけたことなどある。
一番々頭が持参する日々の出納すいとう帳もあまり身にしみては見なかつた。極々まれに、こわごわ娘達の様子を聞くことはあつた。しかし番頭はじめ店の者も誰も、あまり詳しくは話さなかつた。
老主の一時期 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
一 お成長すれば文字を教え針持つ術を習わし、次第に進めば手紙の文句、算露盤の一通りを授けて、日常の衣服を仕立て家計の出納すいとうを帳簿に記して勘定の出来るまでは随分やすきことに非ず。
新女大学 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
その時の引出物ひきでものに、漁猟・廻船・出納すいとう・売買の支配を附与せられ、それにより、市町あきなどころに市神としてまつることになったというのは、もう久しい以前から普及していた俗説であったかと思われる。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)