几案きあん)” の例文
備後びんごともにありと知った足利義昭あしかがよしあきへも使いを派し——この古物の野心家をうごかして——いざの場合、毛利をしてふたたび秀吉の背後をおびやかさしめんなど、几案きあん作戦は
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
藤森恭助御不審の次第あり家内の文書類を出してことごとく見せられよと、家内の者の驚き騒ぐをしかりつけ、書斎の内に押入りて几案きあん箪笥たんすともいはず、こゝかしこを捜りことごとく持ち去りぬ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
几案きあん整然として、すみずみにいたるまで一点のちりとどめず、あまつさえ古銅へいに早咲きの梅一両枝趣深くけたるは、あたたかき心と細かなる注意と熟練なる手と常にこのへやに往来するを示しぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
おおいニ以テ可トシコレヲ慫慂しょうようス。すなわチ屋ヲ駒籠亀田鵬斎かめだほうさいガ故居ノ近傍ニしゅうス。前ハ老杉ニ対シ、後ハすなわチ密竹掩映えんえいス。破屋数間、蕭然しょうぜんタル几案きあん、始メテ老子ヲ講ジヌ。後ニ市ヶ谷ニ移居ス。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)