公方くばう)” の例文
「當り前ですよ。錢形の親分は、どんなに捕物が名人でも、大名になつてくれとは言やしません。公方くばう樣だつて、おかど多いことだから」
ば爲可き者と早も見て取り知たれば我思ふよし云々と吉宗よしむねぬしに言上ごんじやうせしに君又英敏えいびん明才めいさいにていよ/\政治せいぢ改良かいりやうして公方くばうの職を萬世ばんせい不朽ふきうに傳へんといふ素志そしなれば今大岡の言るを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
日本に生れたなら、關白公方くばうにならうと志すが好い。さてそれを爲し遂げるには身を愼み人をなつけるより外は無い。既に國郡が手に入つたら、人物を鑑識して任用しなくてはならぬ。
栗山大膳 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
そのうちに公儀から召出されて公方くばう樣の糸脈を引くんだなんて大法螺おほぼらを吹いてゐるところをみると、あんまり信用のできる醫者ぢやありませんね。
背くも同然の事なりとふにぞ山内も上意じやういとあればかるからざる儀なり先づ一應伺ひの上返答へんたふ致すべし暫くひかへられよとておくへ入りやゝありて再び出で來り次右衞門にむかひ町奉行大岡越前守より申上の趣き伺ひし處大岡の申す條なれども公方くばう樣の上意とあれば如何いかにも其の刻限こくげんに御出あるべしとの上意なり明日は山内にも御供を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「嫌になるぜ、親分。朝顏なんざ、たらひほどに咲かせたつて、公方くばう樣から褒美が出るわけでもなんでもねエ。それより兩國から代地へかけては錢形の親分の繩張り内ですぜ」
公方くばう樣の糸脈を引く——と大法螺おほぼらを吹くだけあつて、なか/\の見識けんしきです。