充溢じゅういつ)” の例文
「今日まで、自分もずいぶん大戦に臨んだが、まだその規模の大、軍備の充溢じゅういつ、これほどまで入念にかかったためしはない」
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「物」のみがもつ無心の静謐せいひつ確乎かっこたる不動の感覚、言葉のない、しかし有限な一つの暗い充溢じゅういつ、無責任な物質の充溢だけに任しているのだ。……
煙突 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
日々死に面する如き迫害にありて生命と勇気に充溢じゅういつしているその心理状態は、実に驚異にあたいするものではないか。これをヨブの哀哭と比して霄壌しょうじょうの差ありというべきである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
文芸は、その不公平な空洞を、水が低きに流れるように自然に充溢じゅういつさせて行くのです。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ひんすればどんするということわざどおりに成り落ちる人間もあるし、また反対に、逆境に立つや、なお持ち前の生命力の充溢じゅういつを示して、逆境いよいよその人の深い所の素質をゆかしくたたえて見せ
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ツ切れの餅の力は、かかとにまで充溢じゅういつしていた。彼は、踵をめぐらして
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)