備付そなえつ)” の例文
虎のような爪牙そうがもなく、鳥の翼、魚の保護色、虫の毒、貝の殻なぞいう天然の護身、攻撃の道具を一つも自身に備付そなえつけなかった。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
三人は殆ど息もつかずに螺旋階段を馳登かけのぼった。頂上はもとの発光室を改造した夜行虫観測所で、幾種類もの観測鏡や特殊の分光器などが備付そなえつけてある。
廃灯台の怪鳥 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
一、私が現場で収得した所の一枚のPL商会の受取切符(三等急行列車備付そなえつけの枕の代金の受取)
一枚の切符 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
かれはこの不順序ふじゅんじょたいしては、さのみめた様子ようすはなく、ただ看護婦かんごふなどの病室びょうしつることをきんじ、機械きかいれる戸棚とだな二個ふたつ備付そなえつけたばかりで、代診だいしんも、会計かいけいも、洗濯婦せんたくおんなも、もとのままにしていた。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
その熊みたいな手で何の雑作もなく女の手をかせて、シッカリ握っている右手を開かせますと、中から見覚えのある台湾館備付そなえつけの桃色の支那便箋を幾つにも折ったものが出て来ました。
人間腸詰 (新字新仮名) / 夢野久作(著)