偏狭へんきょう)” の例文
旧字:偏狹
吾輩の主人の我儘わがまま偏狭へんきょうな事は前から承知していたが、平常ふだんは言葉数を使わないので何だか了解しかねる点があるように思われていた。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
感情をあながちにしりぞけるのではない。女が唯一の頼みとしていた感情は、いわば元始的の偏狭へんきょうと、歴史的の盲動とで海綿状に乱れた物であった。
私の貞操観 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
「さればです。守るには、要害無双ようがいむそうといえましょう。しかし、交通の不便、四山の偏狭へんきょう、政治の地ではありますまい」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これはいかにも偏狭へんきょうなやり方のようにどなたもお考えでしょうが、実際今朝の反対宣伝のような訳で、どんなものがまぎれ込んで来て、何をするかもわからなかったのですから
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
基督キリスト教の信条たる全人類的意識が吾人に現れ始めた初頭そもそもから、かの固陋ころう偏狭へんきょうなる民族主義は渙然として解体し去るべきであるのに、何事ぞそのままに推移して十八世紀の末に至り
永久平和の先決問題 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
ドノバンはなんのためにその頑冥がんめいなほこりと愚劣ぐれつな人種差別とをすてることができないのだろう。なぜその偏狭へんきょうな胸をおしひらいて心の底からぼくらと兄弟になることができないのだろう。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
朝倉のほうが偏狭へんきょうだったのだと思った。
改訂御定法 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
愛は偏狭へんきょうきらう、また専有をにくむ。愛したる二人の間に有り余るじょうげて、ひろ衆生しゅじょううるおす。有りあまる財をなげうって多くの賓格ひんかくかいす。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
偏狭へんきょう非文明的なるビジテリアンをはいす。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)