ねうち)” の例文
おもてをつけず熊野ゆやの舞一くさりあり。久次の牢輿ろうごしにて連れ行かれしを見送り「まことや槿花きんか一日のさかえ、是非もなき世の盛衰ぢやなあ」との白廻せりふまわしもねうちあり。
両座の「山門」評 (新字旧仮名) / 三木竹二(著)
此方の都合も尋ねないで、頭から一緒に行つてやつてお呉れなんて……それだけでも私が怒るねうちはあるのに、おまけに美智子のお供……「誰が——」と思つた。
美智子と日曜日の朝の話 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
たけは四寸二分で目方も余程あるから、慾の深い奴はつぶしにしても余程のねうちだから盗むかも知れない、厨子ずしごと貸すにより胴巻どうまきに入れて置くか、身体に脊負せおうておきな
自分の持って居た自信よりもねうちのない自分の頭がドシーン、ドシーン、とぶつかって来る大浪を乗り切れないでその浪の中にのまれて姿の見えなくなる人が自分の友達の裡に数知れず有る
千世子(二) (新字新仮名) / 宮本百合子(著)