便衣べんい)” の例文
その夜、李陵は小袖短衣しょうしゅうたんい便衣べんいを着け、誰もついて来るなと禁じて独り幕営の外に出た。月が山のかいからのぞいて谷間にうずたかしかばねを照らした。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
さてこそ、門前には、便衣べんいに身体を包んだ憲兵隊けんぺいたいが、それとなく、厳重な警戒をしている有様であった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
張作霖の乗っていた特別軍用列車が奉天城外の瀋陽しんようの手前で爆破された事件は昭和三年のことである。張作霖を爆殺した犯人は支那の便衣べんい隊だと日本軍は発表した。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
彼は便衣べんいに着かえ、大胆にも軽機関銃をこも包みにして持ち、H・デューラン氏の邸に来た。
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
右馬介はあの雲水姿を便衣べんいとして、手下も使い、ここ数日それに奔命ほんめいしていたが
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)