作善さぜん)” の例文
「往生するもしないも、信仰一つじゃよ。そうじゃ、そなたの一生の行ないの書かれてある作善さぜん文箱ふばこをみせよう」
世間では内記のひじりと呼んだ。在俗の間すら礼仏誦経らいぶつじゅきょうに身心を打込んだのであるから、寂心となってからは、愈々精神を抖擻とそうして、問法作善さぜんに油断も無かった。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
従来僧侶そうりょでさえあれば善男善女に随喜渇仰かつごうされて、一生食うに困らず、葬礼、法事、会式えしきに専念して、作善さぜんの道を講ずるでもなく、転迷開悟を勧めるでもなく
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
しかしそれは自力作善さぜんの道徳的行為を媒介として宗教に入るということではない。親鸞しんらんが『歎異抄たんにしょう』においての善人なおもて往生をとぐ、いわんや悪人をやという語、深くあじわうべきである。
絶対矛盾的自己同一 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)