佐女牛さめうし)” の例文
それらを通じて、彼は海外との交易をやらせ、およそ都に見られる唐物からもののすべては佐女牛さめうしの門から密々いちさばかれていた物といってよい。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「卯月朔日ついたち。雨。新日吉しんひえ神社、佐女牛さめうし八幡宮両所へ参る。(下略。)」
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
近くの佐女牛さめうしの一邸へ、佐々木道誉の手勢二、三百人が今暁から帰って来て、久しくけていたやかたが俄に賑わい立っているというのである。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、すぐ横の佐女牛さめうしの杉並木では、非常太鼓のうちに、くろぐろと陣備じんぞなえがおこなわれていたし、またいんいんたるかいの音は洛中の空の諸方で鳴っている。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
翻然ほんぜんと、彼は呟きを抱いて去った。そして七条の河原を西へ渡り、やがて、佐女牛さめうしの自邸へ帰っていた。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、この晩は、義貞という者が来て、終始、かたくなっていたせいか、道誉もあまりいつものような酒興はみせず、ほどなく先に佐女牛さめうしの屋敷へ帰って行った。
昨夜も佐々木道誉の招きで、彼の佐女牛さめうしのやしきへ行ってみたが、豪奢、目ざましいのに驚いた。
彼の輿こしは、ほどなく佐女牛さめうしの宏壮な邸内へ入っていた。師直は、みずみずと打水された前栽せんざいを見、家臣一同の色代しきたい(出迎え)をうけ、のっしのっしと、奥殿へ通って行った。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
七条坊門を見て、佐女牛さめうしの杉並木を横に、兼好を乗せてきた輿は、そこの門内へ入った。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、よくもぬけぬけと。しかし、ここは佐女牛さめうしたちとはちがう。なにもいうまい」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「てまえならではなるまいかと存じ、佐女牛さめうしまで一トむちあてててまいりました」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
佐女牛さめうしの邸である。彼の思いだしていたものは、命松丸めいしょうまるの姿だったにちがいない。
「だっていつか、佐女牛さめうしのおやしきから帰ったあと、佐々木どのの御家来が、何べんも迎えに来たのに、それをすっぽかして、お師匠さんは、うるさいからと、旅へ逃げ出したんでしょ」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こんな情況も聞いたりして、道誉は深更に、佐女牛さめうしの宿所へ駒を返していた。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
師直は一夕いっせき佐女牛さめうしの佐々木道誉の招きでその邸へおもむいた。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)