佐倉さくら)” の例文
佐倉さくらの城主戸田侯が、ふた声ほど呶鳴ったが、内匠頭の耳には通らない。もがきながら、大力の与三兵衛を、ずるッ、ずるっと、三、四尺ほど引きり歩いた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
仕切りの唐紙からかみめてくれたり、さあ御手をお出しなさいと云って、佐倉さくらけた火鉢ひばちを勧めてくれたりするうちに、一時昂奮こうふんした彼の気分はしだいに落ちついて来た。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
最後に七年四月二十六日に允成のれたしつは、下総国しもうさのくに佐倉さくらの城主堀田ほった相模守さがみのかみ正順まさよりの臣、岩田忠次いわたちゅうじの妹ぬいで、これが抽斎の母である。結婚した時允成が三十二歳、縫が二十一歳である。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
それから××君と女の間は日毎ひごとに接近したが、そのうちに女は横浜へ帰り、男は東京へ帰っているうちに、男は兵役の関係から演習に引張り出されて三週間ほど佐倉さくらの方へ往っていた。
二通の書翰 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「そうだとも。炭一片とお言いだけれど、どうだろうこの頃の炭の高価たかいことは。一俵八十五銭の佐倉さくらがあれだよ」とお徳は井戸から台所口へ続く軒下に並べてある炭俵のひとつを指して
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
仕方がないから、佐倉さくらへ降りる。
春の潮 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)