伽羅油きゃらゆ)” の例文
二人はもうどうしていいか分らぬほどな情炎に包まれて伽羅油きゃらゆのとろ火で煮られたかのような酔心地になりかけていた。——その時。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「木戸の蝶番ちょうつがいに油をして、てに音の出ないようにした奴だ。——その油は、日本橋の通三丁目で売っている、伊達者だてしゃの使う伽羅油きゃらゆだ。八、ここにいる人間の頭を嗅いで見ろ」
あどけない笑顔を近づけて、伽羅油きゃらゆのにおいに馬春堂をせさせたのは、獄門橋で見た時とはまるで違って、いかにもおぼこらしい、混血児あいのこのお蝶であります。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いでみると、プーンと伽羅油きゃらゆのにおいがする。そしてしわをのばした紙の中からもつれた髪の毛が四、五本出た。その一本を指に伸ばして見て、彼は女の毛だということを知った。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
江戸の女は、うえかたで、伽羅油きゃらゆ、町方では井筒いづつ松金油まつかねあぶらと限っている
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あたし、生姜はいらないから、太好庵たいこうあん伽羅油きゃらゆがお土産みやげに欲しい」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
炬燵にれる伽羅油きゃらゆの匂いに、孫兵衛、もう恍惚こうこつとなって
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)