伎楽ぎがく)” の例文
とある。また能は宋代の芝居から、雅楽は唐代の伎楽ぎがくから来たものだという林氏の説ものっている。いかにも随筆らしくておもしろい。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
伎楽ぎがく管絃かんげんの興をそえる特種なおんなは、遠い以前からあったけれど、近ごろ、たて烏帽子えぼしに白い水干すいかんを着、さや巻の太刀たちなどさして、朗詠ろうえいをうたいながら
自分の顔がまるで知らない人の顔のように見えて来たり、眼が疲れて来る故か、じーっと見ているうちに醜悪な伎楽ぎがくおもてという面そっくりに見えて来たりする。
泥濘 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
上記の夢を見てから一と月も後に博物館で伎楽ぎがく舞楽能楽の面の展覧会があって見に行った。
夢判断 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
塔という塔の綿帽子が、言い合わせたように西へかしいでいるのでそれが分る。西向きの飛簷垂木ひえんたるきは、まるで伎楽ぎがくの面のようなおどけた丸い鼻さきを、ぶらりと宙に垂れている。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
また伎楽ぎがくを奏して世に珍しき塔供養あるべきはずに支度とりどりなりし最中、夜半の鐘の音の曇って平日つねには似つかず耳にきたなく聞えしがそもそも、漸々ぜんぜんあやしき風吹き出して
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
その仮面は、ありふれた里神楽の仮面もあれば、極めて古雅なる伎楽ぎがくめんに類したのもあるが、打見たところ、篝の周囲に集まるほどのものが、一人として素顔すがおを現わしたのはありません。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
伎楽ぎがくの類は非常な勢いで流行した。皇宮の近いこの土地ではその物音を耳にする機会も多かったであろう。踏歌の類も朝堂の饗宴に盛んに行なわれた。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
塔といふ塔の綿帽子が、言ひ合はせたやうに西へかしいでゐるのでそれが分る。西向きの飛簷垂木ひえんたるきは、まるで伎楽ぎがくの面のやうなおどけた丸い鼻さきを、ぶらりと宙に垂れてゐる。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
衆宝国土の一々の界の上には五百億の宝楼閣があって、その一々の楼閣の中には無数の天人が伎楽ぎがくをやっている。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)