他所見よそみ)” の例文
他所見よそみをせず、こわれぬ幸福をしっかり互に守っているらしい夫婦はあまり見なかったのでそれ以来、特に私は注意するようになった。
睡蓮 (新字新仮名) / 横光利一(著)
「この白ばっくれた人々の眼を、床の動物の方に引きつけ、そこから他所見よそみが出来ないように、否応なく釘付くぎづけにしてやらねばならない。」
ウォーソン夫人の黒猫 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
念のために、他所見よそみながら顔をのぞいて、名を銘々に心に留めると、決して姫がえたのではない。おきての通り十二人。で、また見渡すと十三人。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
貝原の平顔は両顎がやや張って来て、利をつかむときのような狡猾こうかつな相を現わして来た。がそれもじきにまた曖昧あいまいになり、やがて単純な弱気な表情になって、ぎごちなく他所見よそみをした。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
他所見よそみをしているうちに、自分へからかって、先へ帰ったのだろう——そんな暢気のんきな心持で主人の家へ帰って来ましたが、もとより先に帰ったわけではなく、お雛の姿は、それっきり