人真似ひとまね)” の例文
「この店もしかるべき大家のようだが、こう人真似ひとまねをするようになっちゃあ、身上しんしょうが左前になったのかな……番頭にいいのがいねえんだな」
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
鸚鵡は一そうやかましく人真似ひとまねをしだした。かの女はときどきその鸚鵡を見るために脊なかを動かした。その度毎たびごとに彼はかの女の脊なかから彼の眼をそらした。
ルウベンスの偽画 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
私のここに他人本位というのは、自分の酒を人に飲んでもらって、後からその品評を聴いて、それを理が非でもそうだとしてしまういわゆる人真似ひとまねを指すのです。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
庭の広いのと空地の多いのとを利用して、わたしも近所の人真似ひとまねに花壇や畑を作った。花壇には和洋の草花の種を滅茶苦茶にまいた。畑には唐蜀黍とうもろこしや夏大根の種をまき、茄子なすや瓜の苗を植えた。
さる人真似ひとまねをするというのに、これはまた、なんと人真似をしないさるだろう! 真似どころか、他人から押付けられた考えは、たといそれが何千年の昔から万人に認められている考え方であっても
人真似ひとまねかあ、てめえの発心ほっしんは」
(新字新仮名) / 吉川英治(著)