人体じんてい)” の例文
旧字:人體
見受けるところ、剛気なご人体じんていだが、ちからをたのむものは、とかく大怪我をするものだから、私の忠言をお忘れないように、というようなことをいった。
呂宋の壺 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
日に焼けたるパナマ帽子、背広の服、落着おちつきのある人体じんていなり。風呂敷包をはすしょい、脚絆草鞋穿きゃはんわらじばきステッキづくりの洋傘こうもりをついて、鐘楼の下に出づ。打仰ぎ鐘を眺め
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
少しく派手ではあるが寛闊かんかつな様子合いから見ても、銀簪をふるって、女を殺すような人体じんていとは思われません。
磨いた顔をいやにてかてかと光らせて、眉毛を細く剃りつけ、見るから芸人を看板にかけているような気障きざ人体じんていであったが、工面くめんが悪くないので透綾すきや帷子かたびらに博多の帯
廿九日の牡丹餅 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
どちらも飄軽ひょうきんなご人体じんていだから、眠っているところをやるかも知れず、いきなりの出あいがしらに頂戴するかもしれず、頃合いがわからないので、寝た間も気が休まらない。
ボニン島物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
朱塗の大きな円卓えんたくをかこんで、格式張ったお役人ふうなのをひとりまぜ、大商賈おおどこの主人とも見える人体じんていが四人、ゆったりと椅子にかけ、乾酪チーズを肴に葡萄酒の杯をあげている。
顎十郎捕物帳:14 蕃拉布 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)