五分刈ごぶが)” の例文
三人の中でもにいさん顔の次郎なぞは、五分刈ごぶがりであった髪を長めに延ばして、紺飛白こんがすり筒袖つつそでたもとに改めた——それもすこしきまりの悪そうに。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その上五分刈ごぶがりに刈りこんだ頭は、ほとんど岩石のように丈夫そうである。彼は昔ある対校試合に、左のひじくじきながら、五人までも敵を投げた事があった。
一夕話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
垢染あかじみた布団ふとんひややかに敷いて、五分刈ごぶがりが七分ほどに延びた頭を薄ぎたない枕の上によこたえていた高柳君はふと眼をげて庭前ていぜん梧桐ごとうを見た。高柳君は述作をして眼がつかれると必ずこの梧桐を見る。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
五分刈ごぶがりに刈った頭でも、紺飛白こんがすりらしい着物でも、ほとんど清太郎とそっくりである。しかしおとといも喀血かっけつした患者かんじゃの清太郎が出て来るはずはない。いわんやそんな真似まねをしたりするはずはない。
春の夜 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)