事前じぜん)” の例文
しかるに彼ら閣臣のやから事前じぜんにその企をきざすによしなからしむるほどの遠見と憂国の誠もなく、事後に局面を急転せしむる機智親切もなく
謀叛論(草稿) (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
津田の頭に二つのものが相継あいついでひらめいた。一つはこれからここへ来るその吉川夫人をうまく取扱わなければならないという事前じぜん暗示あんじであった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それでこの上海シャンハイへ、憂鬱ゆううつな胸を抱いて、なにか気分をほぐすものはないかと、遊びに来られたのですが、私は、博士を御紹介するのがよいと思ったので、実は、ロッセ氏には事前じぜんに何にも申さないで
暴風雨になろうとして、なりそくねた波瀾はらんはようやく収まった。けれども事前じぜんの夫婦は、もう事後じごの夫婦ではなかった。彼らはいつの間にかわれ知らず相互の関係を変えていた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)