丸鑿まるのみ)” の例文
そこで大きな丸鑿まるのみで眼をこじあけ、細かい仕上げなどは一切省いて、『生命あれ!』と言うなり、この世の中へおっぽりだした訳である。
一年まえのあの日以来、そんなことは初めてで、午後になってもずっと続け、きげんのいい顔で丸鑿まるのみ小刀さすがを使っていた。
四日のあやめ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
私はこの像製作の少し前頃から丸刀がんとうを使い始めたのではないかと思う。丸鑿まるのみは、製作上の実際から考えると飛鳥あすか時代にはなく、飛鳥時代は平鑿ばかり使ったのだろうと思う。
回想録 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
客は続けて、胆石病の痛みは丸鑿まるのみまれるようだ、と云った。胃のさしこみは小刀でえぐられるようだし、肝臓の痛みはきりで穴をあけられるようである。
雪の上の霜 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
丸鑿まるのみ金槌かなづち砿石いしを入れる革袋を持ち毎日暗いうちから山へ登って行く、それを送りだしてからお豊はしゅうとめのおつねと雇男の助三郎すけさぶろうを相手に、野良へ出て百姓の荒仕事にかかるのだ、田鋤たすきにも植付にも
藪落し (新字新仮名) / 山本周五郎(著)