世慣よな)” の例文
彼はあるいは彼女には敵であるかも知れなかった。が、敵であるにもしろ、世慣よなれぬ妹と五十歩百歩の敵であることは確かだった。……
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「きつねは、りこうで世慣よなれてる、世間せけんでたっとばれてる」と、こう考えたので、猫は、あいそうよく狐に話しかけました。
が、もしこれが世慣よなれた人の巧妙なさとらせぶりだとすれば、一口でも云うだけがおろかだと思い直して黙った。叔父は親切な人でまた世慣よなれた人である。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
『無論市村さんは当選に成りませう。』と応接室では白髯しろひげの町会議員が世慣よなれた調子で言出した。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
二年三年の兵営へいえい生活せいかつで大分世慣よなれ人ずれて来た丑之助君が、羽織袴、靴、中折帽、派手はでをする向きは新調のカーキー服にギュウ/\云う磨き立ての長靴、腰のさびしいのを気にしながら
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
『道理で——君は暫時しばらく見えないと思つた。』と言ふは世慣よなれた坊主の声で
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)